更新日:令和2年度6月17日
地域福祉講座は、地域福祉に関する様々な事例について学び、考えることにより自分の住む地域に関心を持ち、今後の地域福祉活動の活性化につながるような素地を作ることを目的として、実施しています。
令和元年度については、文教大学森ゼミの皆さんにご協力いただき、「ケアラー支援」についてをテーマにフィールドワークを実施いただき、レポートを作成いただきました。
>文教大生フィールドワーク
~フィールドワークの実施にあたって~
1.はじめに
皆さんは、「ケアラー」という言葉を耳にしたことは、ありますか。
「ケアラー」とは、介護や看病が必要な家族(身近な人)のケアを担っている人のことです(職業的従事者ではない)。ケアを必要としている方の家族や周りの友人に対しての支援は、制度や条例として確立されておらず充分とは言えない状況です。このレポートは、ケアラー支援について考え、関係機関へのフィールドワークを行い、現状を把握し、広く市民の方に周知することを目的としています。
今回、私たち文教大学の森ゼミの学生と草加市で、ケアラーにスポットを当て、取材をしました。
2.基礎データ
(高年者の人口は、平成29年1月現在・障害者手帳の所持者は、平成29年4月現在)- 高年者の人口
58,897人
- 高齢化率
23.8% - 身体障害者手帳所持者
6,200人
- 療育手帳所持者
1,441人 - 精神障害者保健福祉手帳所持者
1,551人
3.市民の皆さんの身近な相談窓口に行ってまとめました
高年者の窓口
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
障がいのある方の窓口
- 草加市基幹相談支援センター
相談場所が分からない、生活に困っている方の窓口
- まるごとサポートSOKA
4.身近にこのようなケアラーはいませんか?
- 働いている子どもが親の介護を担う(離職問題等)
- 育児と介護を同時に担う(ダブルケア問題等)
- 高齢者世帯の夫婦間で介護を担う(老々介護問題等)
- 事情を抱えた家族などの介護や世話を子どもが担う(ヤングケアラー問題等)
- 80代の親が、ある事情で自立できない50代の子どもの世話を担う(8050問題等)
~相談窓口にいる専門職が感じていること~
1.ケアラーの課題
- 介護離職に追い込まれる。
- 自分が亡くなった後のことが心配である。
- 自分の時間がない。
- 介護方法が分からない。
- 学業に支障が出てしまう。
2.ケアラーに対する現状の支援の一例
- 利用者が短期間、施設などに宿泊(いわゆるレスパイトサービス)。
- 高年者の見守りや話し相手、介護している家族の話し相手となる場。
- 日帰りで入浴や食事の提供、機能訓練。
- 同じような立場の方の介護体験や悩みを共有できる場。
- ケアマネージャーや相談支援専門員に相談し、サービスの調整。
3.支援の課題
- 一時的に介護から解放されるが、家族がサービスを受けている時間以外は介護に追われてしまう。
- 介護の相談をして、気持ちはすっきりするが、一から自身のことや介護のことを話さなくてはならない。
- 家族がサービスを受けるために、着替え等の支度をしなくてはならない。
- 常に介護を必要とする家族がいるため、悩みを共有する場に行けない。
- それぞれの状況にあった介護方法が学べない。
- 介護者のライフプランの相談の場がない。
4.「あったらいいな」と思うケアラー向け支援
- 介護休暇を取りやすくするための取り組み
- 個別で話を聞いてくれる場所
- 介護者同士の交流会
- 介護技術等の勉強会
- ケアラーへの気づき・啓発活動
~まとめ~
1.現場で感じた私たちの視点
- 一人で悩みを抱えてしまう人が多い。
ケアラーは顕在化しにくい。 - ケアラーを支える場が少ない。
多くのケアラーの存在を知って貰えるよう啓発が必要。 - ケアラーは多くのプレッシャーを感じている。
疲弊してしまう。 - ゴールの分からない介護を続けている。
一時的ではなく、常に寄り添える支援が必要。 - ケアラー自身にも人生がある。
ケアラーのライフスタイルあった支援が必要。 - 相談窓口では、障がいがある方・高年者が中心でケアラーへの配慮が少ない。
相談体制として、家族を支援する仕組みが必要
2.市役所の担当者から
文教大学の森ゼミの皆さん、お疲れ様でした。
これまでの大学で経験してきた福祉現場実習では、支援や介護を必要としている利用者の方の自立や生活、人生にどれだけ寄り添うことができるかを学ぶ時間だったと思います。
今回、文教大学の学生さんと共にフィールドワークをしたことで、利用者の方がその人らしく人生を歩んでいくためには、専門職である介護支援専門員などの支援に加え、家族や親戚、友人のサポートが不可欠であること、その家族や親戚などへの支援が不足している現状を再認識することができたと思います。
ケアラーは、独りで多くのことを抱えてしまうことで、ケアラーの存在やケアラーのニーズが表面化しづらいのが現状です。これからは、潜在化しているケアラーの存在やニーズの発掘に向けケアラーについての周知活動をしていく必要があるように感じました。
相談窓口の職員の方々は、支援を行っている中で、家族の話をゆっくり聞いて、解決策を導き出したいが、時間的な余裕がなく、まず目の前の利用者の支援に重点を置かなくてはならない葛藤と日々向き合っています。
現状の福祉サービスは、本人の支援が中心となっており、ケアラーに寄り添って支援をすることが難しい状況です。一方で、ケアラーは誰でもなりうる可能性があるように感じます。フィールドワークを通じて、これからの支援の形は、本人と家族を丸ごと支援していけるような仕組みづくりが必要だと改めて認識しました。
少しでもケアラーの皆さんの力になれるよう、引き続きケアラーについての普及や周知、現状を把握し普及や周知を行うとともに支援の仕組みづくりについて行政と地域が一緒になって取り組んでいけることができるよう、これからも一歩ずつ前に進んでいきます。
編集後記
私たちは、もっとも身近で利用者を支援している家族や周囲の友人といったケアラーの存在を忘れがちになります。ケアラーは悲鳴をあげているのかもしれません。あるいは自分の親、子ども、兄弟のことばかりを考え、自らの人生を考えられなくなっているかもしれません。今回は、そんなケアラーにスポットを当ててみました。大学生たちのレンズを通してみた草加市の福祉相談窓口は、利用者本人へのサービスが中心で、その背後にいるケアラーへの支援が必要であると感じつつも、まだまだ十分な支援ができていないことがわかりました。人生100年時代では、誰もがケアラーになりうるでしょう。市民がケアラーを私事ととらえ、行政のサービスだけではなく、地域の支援者や市民団体等と協働しながら、利用者とケアラーを支える仕組みづくりがこれから求められると思います。本レポートを通して、市民の皆様が、少しでもケアラーについて関心を持ってくだされば幸いです。
文教大学 人間科学科 教授 森 恭子
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