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草加市 SOKA CITY

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草加市指定文化財を新たに指定しました

更新日:2026年6月29日

草加市教育委員会は、草加市文化財保護審議会(会長、岡本一雄氏)の答申を受け、令和8年(2026年)6月29日付けで「草加宿壱丁目の神酒枠」「草加宿四丁目の神酒枠」「草加宿五丁目の神酒枠」の3件について、新たに草加市指定文化財に指定しました。
なお、市指定文化財の指定は、平成26年(2014年)1月24日指定の「瀬崎の冨士行及び富士塚」以来、12年ぶり。今回の指定により、市域の文化財は国指定1件、国登録6件、県指定2件、市指定37件になります。

 

新たに指定した文化財

草加宿壱丁目の神酒枠(そうかしゅくいっちょうめのみきわく)

種別

有形民俗文化財

時代

江戸時代後期から明治時代前期(19世紀)

員数

一対

所有者

草加市壱丁目町会(草加市高砂二丁目)

草加宿壱丁目の神酒枠(甲乙)

草加宿四丁目の神酒枠(そうかしゅくよんちょうめのみきわく)

種別

有形民俗文化財

時代

天保12年(1841年)

員数

1基

所有者

四丁目町会(草加市住吉一丁目)

草加宿四丁目の神酒枠_正面

草加宿四丁目の神酒枠

草加宿五丁目の神酒枠(そうかしゅくごちょうめのみきわく)

種別

有形民俗文化財

時代

天保12年(1841年)

員数

1基

所有者

五丁目町内会(草加市神明一丁目)

草加宿五丁目の神酒枠_正面

草加宿五丁目の神酒枠

評価について

今回指定した神酒枠は、草加宿の町組で結ばれていた大山講(おおやまこう)において、大山への代参の際に御神酒を丁寧に持ち運ぶために使用した道具です。

大山信仰は、現在の神奈川県伊勢原市の大山に鎮座する大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)や大山寺に参詣する信仰です。山頂付近の自然石は石尊大権現(せきそんだいごんげん)として崇められ、「雨降山」(あめふりやま、あふりやま)との別称のとおり、雨乞や五穀豊穣、病気平癒等の信仰を集めてきました。

江戸時代になると、大山信仰は大山の麓に居住する御師(おし、明治時代以降は先導師[せんどうし])と呼ばれる宗教者が各地を廻って布教活動と講の組織化に努め、江戸時代後期には庶民の社寺参詣熱の高まりとともに、信仰と物見遊山を兼ねた大山詣りが関東各地で盛んに行われるようになりました。

大山詣りでは、招福除災を願って神社に奉納する木太刀や神酒枠が信仰用具として用いられ、特に神酒枠は天秤棒の両端に取り付けて2基一対で用いられました。その様子は、歌川広重(うたがわひろしげ)の『東海道五十三次細見図絵』のうち「保土ヶ谷 道中風俗」等の浮世絵にも多く描かれています。

草加地域における大山信仰については、代々御師を務めた旧家に伝わる「武蔵国足立郡檀家帳」や「武蔵国・上総国・安房国・相模国廻村帳」(ともに『伊勢原市史』大山資料編所収) によると、寛政5年(1793)に北谷村、文化7年(1810)に草加宿へ訪ねた記録が伝わり、特に後者は草加宿五丁目の個人宅に数日間滞在して周辺村々への布教活動に励んでいたことがうかがえます。また、明治時代前半に作成された『開導記』(大山阿夫利神社蔵)と呼ばれる旧国郡別に先導師ごとの檀家数をまとめた資料によると、現在の市域のほとんどの旧村で大山講が組織されていたことが分かっています。

しかしながら、多くの大山講は昭和30年代頃までに活動を終えたようであり、その実態をうかがう記録資料も確認することができません。昭和62年(1987)に発行された『草加市史』民俗編は、かろうじて往時を知る者の証言から大山講の活動についてまとめており、草加地域では成年儀礼を目的とした代参が盛んであったこと、代参時期に春・夏の厳密な区別がなかったこと、代参の際は白装束に菅笠、脚絆をまとった地域もあったことなどが記されているものの、木太刀や神酒枠については触れられていません。

草加宿壱丁目の神酒枠について

草加市壱丁目町会が所蔵している神酒枠は、同寸同形の神酒枠2基と神酒樽2個で構成されます。

神酒枠はいずれも霊廟社殿(れいびょうしゃでん)風の造りであり、背部に差し込み口と思われる穴があることから、天秤棒に差して担ぐことを前提に製作されたものと考えられます。意匠は壁面に差異が認められ、甲は右側の壁面に鶴の親子、左側の壁面に鷹が彫られ、乙は右側の壁面に鳳凰と兎、左側の壁面に鷹が彫られています。壁面以外の意匠は共通であり、正面扉は細部まで彫刻が施され、龍の彫刻が扉の周囲と兎毛通(うのけとおし)に組み込まれています。また、斗栱(ときょう)の上部付近には獅子が6体、斗栱の下部付近には波と犀(さい)の彫刻があしらわれています。正面の海老錠付きの桟唐戸(さんからど)の上部には「大山 草加宿」と書かれた額が飾られます。

神酒樽はいずれも錫(すず)製の円筒状であり、差異は認められません。蓋面に注ぎ口と思われる円形の開口部を配すが、いずれも栓は残っていません。

なお、製作時期は、本品とともに保管されていた覚書に明治時代以前との推定が記されていますが、詳細は不明です。関東各地に現存する神酒枠の製造時期を考慮すると、江戸時代後期から明治時代前期のものと考えられます。

なお、覚書には代参のとき、神酒枠は代参者の無事を祈願して大山阿夫利神社に見立てて町会事務所に祀られていたことが記されています。神酒枠自体は天秤棒で担ぐことを想定した造りになっているものの、天秤棒の所在は不明であり、 実際の使用用途については時代により一定ではなかった可能性がうかがえます。また、大山講が存続していた頃は、町内に店舗を構えていた豪商・大和屋浅古半兵衛(やまとやあさこはんべえ)家に保管していたことが記されており、詳しい時期は不明ですが、その後は町会会館に保管場所が移され、現在に至ります。

2基の神酒枠は斗栱、屋根部分の金具の剥落や脇障子の欠損、欄干のつなぎ目の脱落等が見受けられるものの、保存状態は概ね良好です。

草加宿壱丁目の神酒枠(神酒樽)01

神酒枠内に納められていた神酒樽
草加宿壱丁目の神酒枠(神酒樽)02

屋根部を取り外すことで神酒樽を取り出せます

草加宿四丁目の神酒枠について

四丁目町会が所蔵している神酒枠は、神酒枠1基と神酒枠を収める収納箱から構成されます。

神酒枠は黒檀(こくたん)を使用した霊廟社殿風の造りであり、彫刻以外の部分には漆(うるし)が塗られています。意匠の特徴として正面扉に細かい金具があしらわれており、それを囲うように龍の彫刻を配されています。兎毛通には霊鳥、上部の斗栱付近には狛犬や獏(ばく)の彫刻が飾られ、左右の壁面には火燈窓(かとうまど)を彫り上げています。なお、後述する収納箱にて保管されてきたこともあり、斗栱の剥落や正面彫刻の欠損、左窓枠彫刻の剥落、背面格子の破損等があるものの保存状態は概ね良好です。

脇障子の彫刻裏面には「東都 日本橋 恒徳作」と彫り師の名前が刻んであります。恒徳は、江戸後藤流9代目の彫工である後藤三次郎恒徳(他に後藤三次橘恒徳とも)を指すと思われ、伊勢崎神社本殿(いせざきじんじゃほんでん、群馬県伊勢崎市)や拝島日吉神社祭礼奈賀町屋台(はいじまひよしじんじゃさいれいなかまちやたい、東京都昭島市)の彫刻を手掛けるなど、関東地域で広く活躍したことが知られています。

神酒枠の収納箱は、側面に「永代」「草加駅四五組講中」「天保十二 丑 六月日」、上部が一部欠損しているものの羽目板に「大山 御神酒講箱」墨書され、本神酒枠が天保12年(1841)の製作であること、四丁目と五丁目がともに大山講を組織していたか、少なくとも神酒枠を共用していたことを推察させます。

なお、草加宿五丁目の流れをくむ五丁目町内会にも本品と同寸同形の神酒枠と収納箱が伝わっており、1基ずつ分けて保管していたと思われます。

以上の点から御神酒を注ぐ神酒樽や天秤棒は現存しないものの 、本品は草加宿四丁目で用いられた神酒枠であると考えられます。

草加宿四丁目の神酒枠_収納箱02

草加宿四丁目の神酒枠_収納箱01

神酒枠を納めていた収納箱。
羽目板に「大山御神酒講箱」(上段画像)、箱側面に「草加駅四五組講中」(下段画像)と墨書されています。

草加宿五丁目の神酒枠について

五丁目町内会が所蔵している神酒枠は、神酒枠1基と神酒枠を収める収納箱1箱、神酒枠内に収められていた板書1点から構成されます。

神酒枠は黒檀を使用した霊廟社殿風の造りであり、彫刻以外の部分には漆が塗られています。意匠の特徴として正面扉に細かい金具があしらわれており、それを囲うように龍の彫刻を配しています。兎毛通には霊鳥、上部の斗栱付近には狛犬や獏の彫刻が飾られ、左右の壁面には火燈窓を彫り上げています。なお、後述する収納箱にて保管されてきたこともあり、正面扉の留め具の欠損、神酒枠下部における虫損や傷、正面左上 彫刻の一部欠損があるものの、保存状態は概ね良好です。

脇障子の彫刻裏面には「木彫工 後藤三次郎恒徳」と彫り師の名前が刻んであります。後藤恒徳は江戸後藤流9代目を名乗り、伊勢崎神社本殿(群馬県伊勢崎市)や拝島日吉神社祭礼奈賀町屋台(東京都昭島市)の彫刻を手掛けるなど、関東地域で広く活躍したことが知られています。

また、内部には「天保十二年丑年七月吉日 江戸小伝馬住 餝師 石井七五郎政信作 木地細工人 兼田権治郎信次(花押)」と記された板書が収められており、本品の製造工程を探る上で大変貴重な情報を記していますが、楷書体で記されている点や木板に大きな劣化が感じられないため、何かに記されていた内容を後年に写したのではないかと思われます。

神酒枠の収納箱は、側面に「永代」「草か駅四・五組講中」「天保十二 丑 六月日」と墨書され、本神酒枠が天保12年(1841)の製作であること、四丁目と五丁目がともに大山講を組織していたか、少なくとも神酒枠を共用していたことを推察させます。また、正面部分は硝子戸が落とし込む方法で設けられていますが、収納箱の溝枠部分が追加されていることから、後年に増設されたものと思われます。

なお、草加宿四丁目の流れをくむ四丁目町会にも本品と同寸同形の神酒枠及び収納箱が伝わっており、1基ずつ分けて保管していたと思われます。

以上の点から、御神酒を注ぐ神酒樽や天秤棒は現存しないものの 、本品は草加宿五丁目で用いられた神酒枠であると考えられます。

草加宿五丁目の神酒枠_収納箱
神酒枠を納めていた収納箱。

草加宿五丁目の神酒枠_脇障子
脇障子に刻まれた「木彫工 後藤三次郎恒徳」の文字

総評

大山講で用いられた神酒枠は、調査報告されたものに限っても埼玉県、東京都、神奈川県で20件ほど確認されており、その所在の多くは町場(まちば)に集中しています。豊富な彫刻に飾られ、屋根の形式も多様で豪華な意匠であることからは、町場の講員が潤沢な資金を投じて製作したことを想起させます。

今回指定した神酒枠は、既に活動が途絶えて久しいながらも、かつて関東一円に広まった大山信仰の草加地域における実態を考える上で大変重要なものです。また、他地域の神酒枠と比較しても装飾や保存状態に遜色ないことから、市指定有形民俗文化財に指定すべき価値を持つものとして評価します。

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