更新日:2011年3月31日
広報そうか 第381号 昭和57年4月5日号
往来する人々を見守って
(23)道陸神(新里町)
新里町(にっさとちょう)にある谷塚西公民館のほど近いところに、細く古い、一本の通が通っています。
かつてこの道は、毛長川にある舟着場からの旅人を導く役目を果たしていました。
このかたわらにまつられた道陸神(どうろくじん)は、数えきれないほど多くの人々の道行くさまを見守ってきました。
ある春の日の午後、村の子供が二人、道端を流れる小川に魚とりにやってきました。
子供たちがいつもの場所に来てみると、一人の男が小川のほとりで倒れているのに気が付きました。こわごわ近寄ってみると、男は片腕を半分水の中に落とすようにして苦しんでいました。どうしてよいか分からない二人は夢中で家へかけ込みました。畑に出ていた父親は、我が子の様子に驚き、わけを問いただすと、すぐきま男が倒れている場所へ急ぎました。
やがて、近くの家の人たちも集まり、手当てが始まりました。しかし、この男の病状は重いらしく起き上がる様子が全くありません。
このため、ひとまず村長の家で男をあずかることになりました。
村長の家での手厚い看護にもかかわらず、男の病は良くなる気配がなく、すでに二日が過ぎていました。「医者がいてくれたらなあ。だが、小さい村のことだから」村長もすっかり弱ってしまいました。それでも、村の人たちは薬草や、体に良い食べ物を毎日持ち寄ったりしたのでした。
こんな気持がつうじたのか、四日たった日の朝、男はやっと起き上がれるようになったのです。
そこで村長が話を聞くと、男は川越で海産物商を営むもので、商いで江戸から帰る途中にこの病にとりつかれたということでした。
次の日、男はすっかり世話になった村の人たちに礼をしたあと、元気に帰っていきました。
結局、男の病の原因は全くつかめずじまいでしたが、「毛長川を渡る舟を降り、歩き始めたとたん寒気がした」という男の言葉が村長の耳には妙に残っていました。
やがて、村長は近在の古老から道陸神のことを伝え聞きました。この神は、道路の悪霊を防ぎ、行人を守護するというものでした。
そこで、さっそく村の人々とともに、男が倒れていた道のはたに道陸神をまつったのです。一七六二年のことでした。
道行く人の安全を願ってまつられたこの神さまは、足腰を治すとも伝えられ、人に見られずにわらじを供えれば御利益があると、現在でも、人々から親しまれています。
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