更新日:2011年3月31日
広報そうか 第370号 昭和56年10月5日号
道了様と天狗のたたり
(13)化け物店(柳島町)
柳島の農家の人たちは昔から講を作り、道了様におまいりをしてきました。道了様は、箱根に近い明神ヶ岳の山中にあり、古くから農業の神として多くの人々にうやまわれてきたからです。
この道了様は名を道了薩唾(さった)といい、小田原の最乗寺を守護する大願を起こして天狗になって昇天したと伝えられます。
かつて、カネマスの屋号をもつ一軒のとうふ屋がありました。
この主人は仲エ門といい、たいそう信仰深い男で、そのためか道了様の講でも重要な役番についていました。この仲エ門さん、近所の農家では稲刈りも済み、ほっとしておまいりをむかえようというのに、一向に気が晴れません。というのは、おまいりのために積み立てたみんなのお金がどうも不足しているのです。「こんなことでおまいりができなくなっては道了様に申しわけがない」。こんな悩みで頭の痛い毎日でした。
そこで仲エ門さんはもう一人の役番の男に事情を話し、相談をもちかけてみました。ところが次の日、大豆の仕入れから帰った仲エ門さんが耳にしたものは、「カネマスは講の金で店を大きくした」といううわさでした。
そんなある日、村の人たちが農作業の手を休め、木の下でとうふ屋の悪口をいっていたところ、突然、バラバラッと上から落ちてきたものがありました。それはなんと、とうふだったのです。
この出来事はいっぺんに村中に広まり、人々が寄るところカネマスの仕わざといううわさで、仲エ門さんはますます困ってしまいました。「カネマスの悪口をいうと、とうふをぶつけられる」「こんどは油揚が降ってくる」「いや、おからに違いない」。
こんなさわぎの最中、もう一人の役番の男の家では、赤ん坊が生まれました。ところがある日、この赤ん坊が行方不明になり、家中が大さわぎになりました。方々を探すと、その赤ん坊はふとんにくるまったまま庭にある榎の大木のてっぺんにひっかけられているではありませんか。やっとのことで我が子を手にした男は湯に入れてあげようと風呂おけをふと見ると、自分の顔が映っているはずなのに天狗の顔があったのです。
男がいっさいを白状し、金を返したのはいうまでもありません。
こんないきさつを知らず「あの店の悪口をいうとたたりがある」といううわさを伝え聞いた人々は、いつのころからか、このとうふ屋を化け物店(だな)と呼ぶようになったそうです。
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