| 文・埼東文化会 樋口 素秋
朝夕の寒しといわじ華の雪 草加 嚶之
麓から笑いそめるや春の不二 草加 一得
この句は、弘化二年(一八四五)乙巳(きのとみ)霜月(陰暦十一月)市内瀬崎町の浅間神社(本殿は市指定有形文化財)に奉納されている俳句奉納額の中の地元の氏子の句である。この後尾には地元の勧進元の句が六句収録されている。
ご存じのように、浅間神社は、駿河国一ノ宮浅間神社の勧請(かんじょう・神の分霊を講じ迎える事)を受けた富士信仰の神社である。かつては瀬崎村の村社に列し、この地域の地場産業である「晒業(さらしぎょう)」の信仰を集めていた。従って、この俳句の奉納額の句は、近郷・近在の富士信仰の人々と晒業の人々であり、草加の外、東都・深川・伊勢・房州・阿州・内藤新宿・口丁野・野田・越ケ谷・大沢などの俳人が参加している。
瀬崎地区には、特に「富士講(富士山を信仰する講社)」が盛んで、信徒は夏になると白衣を着て六根清浄(ろっこんしょうじょう)を唱え鈴を鳴らして富士山に登る。瀬崎浅間神社の外市内各地には、「富士塚」が多く見られる。富士登山が出来ない人々は、この富士塚に登る。
勧進元には、次の者が名を連ねている。太郎彦・巳千・氷佳・右行・卓郎・志一の六名だ。
出典 『草加の社寺・市資料IV・草加の社寺資料』瀬崎浅間神社所蔵
|