メニューにジャンプコンテンツにジャンプ
草加市 SOKA CITY

雨になった龍

更新日:2011年3月31日

広報そうか 第372号 昭和56年11月5日号

天に通じた雨ごい

雨になった龍イラスト

(15)雨になった龍(稲荷町)

江戸時代の農民の暮らし向きは米の収穫高によって大きく左右されました。凶作ともなれば、悲惨な生活を余儀なくされるため、日照り続きの毎日ともなると、必死の面持ちで雨ごいをしました。

江戸末期、現在の稲荷町、慈尊院一帯の農民たちは、今年もまた、早苗を植え終え、ほっと一息ついては、実りの秋に黄金色に輝く稲穂を刈りとることに思いをめぐらせていました。ところが、雨期を迎えても雨は一向に降らず、まぶしい太陽が連日、顔をのぞかせていました。大豊作を夢みていた農民たちは次第に水ききんのことが心配になり、居ても立ってもいられませんでした。慈尊院の境内には、今日もまた、太陽を見ては心配顔をした農民たちが、どこからともなく集まって、どうしたものかと思案にくれていました。

そんなある日、みすぼらしいいで立ちの一人の僧が、仏像を背負いながら疲れた足どりでやってきました。僧は修学のため、常陸の国(現在の茨城県)を出発し、全国行脚の途中でした。慈尊院の前までくると、背負っていた仏像が急に重くなり、一休みしようと農民たちの前に座り込んでしまいました。農民たちは、いぶかしげな顔で僧を見つめていましたが、ちょうど良い機会だと、一人の農民が水ききんの相談を持ちかけました。すると、僧は、やにわに正座し、顔をひれ伏しては意味のわからない言葉をとなえました。何ごとか、と見守っていた農民たちはしばらくして雨ごいをしているのだとわかり、農民たちも見よう見まねで必死になって雨ごいを始めました。すると、境内にある古い池から突然、龍が姿を現し、アッという間に天に昇っていきました。そして、今まで雲ひとつない空が急に暗くなり、大粒の雨が地面をたたくように降り始めました。これを見た農民っちは「ご利益だ、ご利益だ!」と大騒ぎになりました。

雨は、その後も降り続き、今まで干あがっていた田んぼは一面に水をたたえました。農民たちは小躍りして喜び、僧にお礼をし、背負っていた仏像を大切に安置しました。それでも足りずと、農民たちは小さな祠(ほこら)をつくり、龍を雨ごいの神としてあがめました。

その後も農民たちは、水ききんになると慈尊院へかけつけて雨ごいをしました。慈尊院の本堂には、現在でも都内の綾瀬川沿いの人が奉納した雨ごい絵馬がいくつか見受けられます。雨ごいの慈尊院として、その名が広く知れわたったことを示すものです。

このページに関するアンケート

このページに関する問い合わせ先

広報課
住所:〒340-8550 草加市高砂1丁目1番1号
電話番号:048-922-0549
ファクス番号:048-922-3041

草加市 SOKA CITY

郵便番号:340-8550 埼玉県草加市高砂1丁目1番1号
電話番号:048-922-0151(代表) ファクス番号:048-922-3091

開庁時間:月曜日から金曜日(年末年始・祝日を除く)午前8時30分から午後5時/水曜日夜間(午後9時まで)
日曜総合窓口(午前9時から午後0時30分)
水曜日夜間・日曜総合窓口の取り扱い業務一覧