更新日:2011年4月1日
広報そうか 第362号 昭和56年6月5日号
沼に架かる大蛇の橋
(5)宮沼弁財天(弁天町)
篠葉村(現在の弁天町)には、宮沼といわれている沼と。そのほとりに弁財天を祭る祠(ほこら)がありました。祠の周囲には木がうっそうと茂っていました。
宮沼ではコイやフナ、ウナギなど魚がたくさん取れましたが、弁財天の仕いの大きな蛇が住んでいるといううわさがありました。
篠葉村の人々は、この大蛇を見たことはありませんでしたが、時折田んぼの稲が、大きな丸太を引きずった跡のように倒されているのをみて、大蛇が住んでいるものと信じていました。
村では実際に小さな蛇をよく見かけました。村のある女房が、夫が重い病にかかったためこれを治してもらおうと、弁財天にお参りにいったところ、昼なおうす暗い祠の前で、小さな蛇がたくさんとぐろを巻いているのをみました。不気味に思ったものの女房は、夫の病を早く治したいという一心から思いきって祠にいきました。お参りが終わりふと振り向くと蛇は影も形もみえなくなっていました。その後は毎日お参りを続けましたが二度と蛇をみることはなく、やがて夫の病もよくなりました。
ところがある日、二郷半領(現在の吉川町や三郷市)の村人が、この宮沼に魚つりにきました。沼にかかった丸太を渡り、祠の近くでつりを始めました。
やがて日も暮れかかってきたので、さて家に帰ろうと先刻の丸太の橋を捜しましたが、どこにも見当たりません。村人は、この沼に住むという大蛇の話を思い出し、丸太と思って渡ったのは大蛇にちがいないと考えました。
村人は急に恐ろしくなり、慌てて家に逃げ帰りましたが、その後しばらく高熱にうかされて床に伏せてしまいました。
次に被害に遭ったのは、宿篠葉(現在の松江町)の村人でした。二郷半領の村人の時と同様に渡った丸太が帰りに消え、同様に家に逃げ帰り熱にうなされました。
やがて、近郷近在の村人の間にうわさが広まり、「とぐろを巻いている大蛇を見た」、「つりをしている時、目の前に丸太が流れてきたと思ったら大蛇だった」、「熱にうかされ死んだ者もいる」などと言われるようになり、次第次第に近郷近在の村人は宮沼につりに来なくなりました。
しかし、篠葉村の村人が魚取りに行くと、誰一人として大蛇の橋を渡ったことも、大蛇に出会ったこともありませんでした。
今でもこの弁財天の祠には、時折、蛇の好物である生卵が捧げられています。
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